宝物。
私の宝物ってなんだろう。
そう考えた時に、自分の持っている“物”ではないな、と思った。
物はお金さえあればいつでも買えるから。たとえ失くしたり売ったりして手元からなくなっても、買えばまた手元に戻ってくる。
なんだかそれを宝物だと言うことができなかった。
じゃあ自分の宝物ってなんだ?
もしかしたらそれは「思い出」かもしれない。
これは他の人もそうなのか、自分固有のものなのか分からないのだが、自分はもう2度と会えなくなってしまった人が記憶にこびりつく。
正直普段一緒に過ごしているときはそんなに他人のことなんか思い出さないんですよ。
でももしもうその人と会うことがなくなってしまったら、もし亡くなってしまったりしたら。
今まで一緒の時間を過ごしていた時よりも頻回にその人が心に浮かぶ。
最近だと、私の行きつけの男装カフェのギャルソンが昨年の11月末に卒業された。
その方は私の憧れでした。
独特なモノの考え方、自分の意見を遠慮しないで言うところ、それでいて気配りができるところ、マイペースなところ。
もちろんお顔も好きでした。
もうお店に行ってもその方に会えないんです。
なんか、自分が行ける範囲で頑張ってお店に足を運んだけれど、その人とはいつも会えた訳ではないから。
もっと会っておきたかった。もっとお話を聞きたかったなぁ。
今、仕事とか普段の生活の中でもふっと「あの人だったら、こういう時になんて言うだろうか」とか心に浮かぶんです。
なんなんだろうこれは。
忘れるどころか、もっと記憶が強くなって残る。
サヨナラには強くなれない。